妻籠宿の空き家解体に思うこと

昨日、ウェブニュースで「妻籠宿で空き家解体」という記事を見つけました。詳細はリンク先にお譲りしますが、妻籠宿は、日本中が古いものに見向きもしなかった高度経済成長期から「町並み保全」に取り組み、全国で初めて重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定された地域です。中山道の宿場町の風情が色濃く残り、いまや世界中から観光客が訪れ、日中の賑わいは相当なものですが、そんな妻籠宿をして空き家の維持が課題になっているとは衝撃でした。これなら、全国の古い町並みの事情は推して知るべしと思います。

歴史的な町並みは、ただ1棟の古民家で成り立っているものではありません。景観的な連続性が重要な要素ですから、わずか1棟の解体が全体の魅力を大きく減じてしまうこともありますし、遠方にあるビルや鉄塔などが景観を害することもあります。それゆえ保全が難しいのですが、保全はあくまでも住民の意思によってなされるべきだと私は思います。

妻籠宿が1976年の重伝建選定以来、40年以上にわたって「空き家の解体ゼロ」を継続できた背景には、日本の町並み保全を牽引してきたという矜持もあるでしょう。人口減社会になって久しいなか、いままで空き家の解体が起こらなかったのは、ほとんど奇跡に近いことと思います。今回の解体は、そんな妻籠宿が発したSOSのように思えてなりません。その声に耳を傾けつつ、「なぜ町並みを守るのか」「どのように守るのか」を再確認していかなくてはならないと感じました。

https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20190409/KT190408FTI090021000.php


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